拡張型心筋症の病因を解明するために、細胞膜のscaffolding proteinであり、最近筋ジストロフィー症の原因遺伝子の1つであることが判明したカベオリン-3と同疾患との関連を検討した。拡張型心筋症患者52名から、インフォームド・コンセントを得た後、血液を採取し、白血球からゲノムDNAを抽出した。ヒト・カベオリン-3のシークエンスから、エクソン全長をカバーするように、6つのプライマー・ペアを合成し、それぞれDNAサンプルからPCRを行った。PCR産物は、SSCP法によりpolyacrylamidegelで分離し、銀染色法で染色した。6種類のPCR産物のうち、カベオリン-3のエクソン2のC末端側をコードしたものの解析から、52サンプルのうち3サンプルで泳動パターンの違いがみられた。対照として虚血性心疾患例のゲノムDNAを同様に解析したが、現在のところ明らかな泳動パターンの違いは認めていない。現在、これらのPCR産物をサブ・クローニングし、シークエンスを解析中である。本法での解析により、拡張型心筋症の新しい病因の発見や発症リスクを高める遺伝子多型の発見につながることが期待される。来年度は、今回行ったエクソンのシークエンスにより遺伝子変異を検討すると共に、イントロンをクローニングし、変異の有無をPCR-SSCP法により検討する。また、同様に家族性肥大型心筋症での変異の有無を検索する。さらに拡張型心筋症患者の心筋生検サンプルの免疫染色、RT-PCR、immunoblottingによりカベオリン-3の発現変化とカベオラの形態学的変化を検討する。
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