自己骨髄単核球移植による虚血心筋血管新生療法の試み

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11770382
• 研究機関: 久留米大学
• 研究代表者: 新谷 理 久留米大学, 医学部, 助手 (20309777)
• キーワード: 治療的血管新生 / Gene-cell therapy / 骨髄由来単核球 / phVEGF165 plasmid DNA / 血管内皮細胞 / 虚血性心疾患

研究概要

我々はこれまで虚血性心疾患の治療の研究に積極的に取り組んでおり、この単核球の分画中の血管内皮細胞に分化しうる幹細胞(progenitor endothelial cell;PEC)に血管形成促進因子を組み合わせ生体に投与する事によって血管新生を促進させ治療に結びつけられるという新しい血管形成機構の概念は、治療法の開発において非常に大きな意味を持つ。実験モデル動物(dog)は、人工呼吸麻酔下に対角枝を結紮し、心筋梗塞の作成結果は肉眼的所見、心電図変化および局所壁運動異常により確認した。3グループに分けて、虚血心筋部5ヵ所にHistopaque-gradient法で分離した骨髄由来単核球を投与移植(筋注法)し、手術を終了する。Plasmid DNAの増幅と精製はMaxi prep法を用いておこなう。Group1:生理的食塩水 Group2:骨髄由来単核球 Group3:骨髄由来単核球とphVEGF165plasmid DNA 血管新生の評価法の確立 (a)術後14病日、麻酔下で開胸しsacrificeする。(b)各個体から虚血組織を摘出し、毛細血管新生の程度を定量評価する。(c)組織壊死の程度をH-E染色下に評価する。(d)単核球が血管新生部位に組み込まれているか検討するために、一部の動物においては単核球を蛍光標識する。虚血部位の凍結切片を作成し蛍光顕微鏡下で毛細血管と蛍光標識細胞の位置関係を検討する。(e)壁運動測定用パッチにて、心筋梗塞作成前後および上記病日の局所壁運動を評価する。動物実験レベルで成功が認められるならば、治療的血管新生の一つの戦略となり得ると考えられる。本研究では遺伝子と細胞を組み合わせたものであり(Gene-cell therapy)、独創性が非常に高いと思われる。既に米国ではヒト骨格筋と冠動脈に対し、遺伝子治療が行われているものの、社会的にも大きな反響を与える可能性があるため、この分野の専門家と慎重に検討しつつ計画を進めたい。

研究成果

• [文献書誌] Shintani,S.,T.Murohara,et al.: "Local transplantaion of autologous bone marrow-derivedmonomuclear cells augments collateral vessel formation in ischemic hindlimb in rabbits."Circulation. 1999;100(abstract). I-406 (1999)
• [文献書誌] Shintani,S.,T.Murohara,et al.: "Transplantaion of autologous bone marrow derived mononuclear cells Augments neovascularization in vivo."J.Mol.Cell.Cardiol.. 1999;31(abstract). A182 (1999)
• [文献書誌] Murohara,T.,S.Shintani,et al.: "Heterologous transplantation of human cord blood-derived endothelial progenitor cells participate in postnatal angiogenesis in vivo."Circulation. 1999;100(abstract). I-476 (1999)
• [文献書誌] Murohara,T.,S.Shintani,et al.: "Role of vasculogenesis in postnatal neovascularization."J.Mol.Cell.Cardiol.. 1999;31(abstract). A163 (1999)
• [文献書誌] 新谷 理、室原豊明: "医学のあゆみ"医歯薬出版株式会社. 2 (2000)