研究概要 |
(1)JAB cDNA組込みアデノウイルス・ドミナントネガティブSTAT3 cDNA組込みアデノウイルス作成 JAB cDNAおよびドミナントネガティブSTAT3 cDNAをpAdCMVLink-1に組換え、pAdCMVJAB,pAdCMVDNS3を作成。それぞれをアデノウイルスベクターADVCMVLacZと293細胞にco-transfectionし、組換えアデノウイルスADVCMVJAB,ADVCMVDNS3を作成を試みた。この過程でpAdCMVJABは293細胞の増殖を著しく抑制することが見いだされ本方法ではpAdCMVJABの大量精製は不可能であると判断した。そこでADVCMVDNS3についてのみ組換えアデノウイルスDNAを抽出しPCR法により組換えを確認後、ウイルスを大量精製した。 (2)再生内膜肥厚に対するADVCMVDNS3遺伝子導入の効果検討 ラット頸動脈バルーン傷害時に傷害局所の内腔から特殊バルーンカテーテルを用いてDNS3遺伝子を導入した。傷害血管におけるDNS3発現とそれに伴うStat3リン酸化の抑制をウエスタンブロット法を用いて確認した。DNS3遺伝子導入により新生内膜形成が著しく抑制された。その機序として、新生内膜における平滑筋細胞増殖の抑制と(BrdUラベル法)、アポトーシスの亢進(TUNEL法)が関与することが明らかとなった。全身臓器の炎症所見や多臓器におけるDNS3遺伝子発現はみられず明らかな副作用はなかった。以上から、Stat3が新生内膜平滑筋細胞の増殖亢進・アポトーシス抑制を介して血管傷害によるリモデリングに重要な役割を果たしており、Stat3活性を制御する遺伝子治療が有効である可能性が示された。今後、大同物を用いた実験を行い臨床応用に結びつけたい。
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