1.TGF-βの可溶性レセプターの遺伝子導入によるTGF-βの制御の試み TGF-βレセプターの細胞外部分の遺伝子をアデノウイルスに組込み、ラットの骨格筋に導入し血中へTGF-βの可溶性レセプターを分泌させることを試みた。ノーザンブロット法により骨格筋におけるTGF-β可溶性レセプター遺伝子の発現増加を確認すると同時に、ウェスタンブロット法により血液中の可溶性レセプター蛋白の増加も確認した。血管内膜傷害モデル動物であるラット頚動脈バルーン障害モデルを用いて、このTGF-βの可溶性レセプターの動脈硬化病変におよぼす影響を検索した。遺伝子導入から発現までの時間を考慮し、まず骨格筋にTGF-β可溶性レセプター遺伝子を導入し血中の可溶性レセプター蛋白増加を確認後、バルーンにより頚動脈内膜を傷害させた。血管組織の病変の変化を光顕にて、細胞増殖や細胞外マトリックス遺伝子および蛋白の発現を、RT-PCR法および免疫組織染色にて検討しているが、現在のところ顕著な効果は見られず、TGF-βの抑制の至適時期、可溶性レセプターの必要量について検討中である。 2.TGF-βの情報伝達物質としてのSmad蛋白の血管平滑筋細胞における役割の検討 培養血管平滑筋細胞に対してアデノウイルスをベクターとし固有型、共有型、抑制型の各Smad遺伝子の導入を行い、細胞増殖や細胞外マトリックス産生への影響を検討した。コントロールに対し、固有型Smadの遺伝子導入により細胞増殖の抑制、マトリックス産生増加がもたらされ、共有型を同時に導入すると増強された。また抑制型Smadの導入ではマトリックス産生が抑制された。また、現在ラット頚動脈バルーン障害モデルを用いて、各Smad蛋白の発現を検討中である。
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