新しい冠危険因子としての内因性NO合成阻害物質

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11770387
• 研究機関: 久留米大学
• 研究代表者: 宮崎 洋 久留米大学, 医学部, 助手 (80279174)
• キーワード: 一酸化窒素 / 血管内皮 / ジメチルアルギニン / 動脈硬化 / 危険因子

研究概要

循環血中に存在する内因性NO合成阻害物質ADMAの存在に着目してきた我々は、Dahl食塩感受性高血圧や実験腎炎の発症進展にこの物質が関与することを明らかにし、これら基礎的成果をもとに臨床的意義を明らかにするため研究を展開した。NOがその病態に大きく関与する心不全患者において検討したところ、重症度の進行に伴いADMA血中濃度が上昇し心機能と逆相関すること、また内皮由来NOの作用不全が血管病変進展と深く関わる加齢・高血圧・糖尿病などの冠危険因子を有する患者ではその程度と血中ADMAレベルが相関し冠危険因子数の増加に伴い血中濃度が上昇すること、更に頸動脈硬化の程度と相関しADMAそのものが頸動脈硬化の独立した危険因子であることなどを報告した。これらの結果はADMAが冠危険因子を介してヒト動脈硬化発症進展に大きく関与することを強く示唆する。実際、剖検例において検討したところ動脈硬化病変においてはその進展に従いADMA代謝酵素の発現が変化し組織内のADMA含量が上昇することが明らかとなり、前述のL-アルギニンによる臓器保護作用機序の一つとしてL-アルギニンアナログであるADMAの異常が関与することが考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Miyazaki H et al.: "Endogenous Nitric Oxide Synthase Inhibitor,A Novel Marker for Atherosclerosis."Circulation. 99. 1141-1146 (1999)
• [文献書誌] Miyazaki H et al.: "Hemodialysis Impairs Endothelial Function via Oxidative Stress.-Effects of Vitamin E-Coated Dialyzer-"Circulation. (in press). (2000)
• [文献書誌] Ueda S,Miyazaki H,et al.: "Tetrahydrobiopterin Restores Endothelial Function in Chronic Smokers."J Am Coll Cardiol. 35. 71-75 (2000)
• [文献書誌] Usui M,Miyazaki H,et al.: "Endothelial Dysfunction by Acute Hyperhomocyst(e)inemia.-Restoration by Folic Acid-"Clinical Sciences. 96. 235-239 (1999)
• [文献書誌] Fujisawa M,Miyazaki H et al.: "Role of Lipoprotein (a) and TGF-b1 in Atherosclerosis of Hemodialysis patients."J Am Soc Nephrol. (in press).
• [文献書誌] Wada Y,Miyazaki H et al.: "AA amyloidosis in Takayasu's arteritis--long-term survival on maintenance haemodialysis."Nephrol Dial Transplant. 14. 2478-2481 (1999)