1.RPA1によるeNOS遺伝子の転写抑制機構の解明 ヒト臍帯静脈血管内皮細胞に、内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子(eNOS)遺伝子の野生型及び変異型プロモーターを繋いだルシフェレースレポーター遺伝子をトランスフェクションし、転写活性を比較したところ野生型プロモーターに比べ変異型プロモーターはその転写活性は約20%の低下を認めた。さらにreplication protein A1 (RPA1) の発現ベクターを共発現させたところ、eNOS遺伝子の変異型プロモーターの転写活性はさらに低下した。RPA1のアンチセンスによりRPA1の発現を抑えたところeNOS遺伝子の変異型プロモーターと野生型プロモーターの転写活性の差は消失した。これらのことからRPA1が変異型eNOS遺伝子の転写活性を抑えることが明かとなった。また、変異部位を3回くり返し配列をSV40のプロモーターに繋いだ遺伝子の転写活性はSV40の転写活性を約50%低下させた。これより、このRPA1による遺伝子発現抑制作用はeNOS以外の遺伝子の転写活性にも作用することが示唆された。 2.欠失蛋白を用いたRPA1の機能解析 RPA1はこれまで、DNAの複製及び修復に関与するタンパク質としてssDNA結合部位、RPA2やp53との結合部位などが明らかにされているが、double strand DNA (dsDNA)との結合、転写抑制活性については未だ明らかではない。そこで、RPA1 cDNAより作製したリコンビナントRPA1を用いてeNOS遺伝子の変異配列をプローブにしたゲルシフトアッセイを行い、結合して移動度の異なるシフトバンドを認めた。またそのシフトバンドはRPA1に対する特異抗体により結合が阻害され消失した。このことからRPA1が変異配列に結合することが明かとなった。現在、RPA1部分欠失蛋白を用いてその結合部位を同定中である。
|