1.GATA-1遺伝子が不活化された造血細胞がどのような機序で生体内で増殖優位性を獲得するかを明らかにするために、まずGATA-1ノックダウン・マウス(GATA-1.05)のヘテロの雌の脾細胞から正常のGATA-1遺伝子が不活化された細胞を株化することを試みた。生後6ヶ月以上経過したGATA-1ノックダウン・ヘテロマウスの腫大した脾臓から単核球を比重遠心法で分離し、エリスロポイエチン(EPO)とステムセルファクター(SCF)を含む液体培養系で長期培養を行った。またその他の増殖因子の組み合わせでの株化を試みた。しかし、結果的に細胞株を樹立することはできなっかった。そこで細胞株が樹立されるまでの間、筑波大学TARAセンターで樹立されたGATA-3でレスキューされたGATA-1ノックダウン・マウスの脾臓細胞から樹立された細胞株452S/Eの解析を行うことにした。452S/E細胞は、EPOとSCFがその増殖には不可欠であるが、その他の増殖因子に置き換えることができるかを検討した。その結果、EPOをトロンボポイエチン(TPO)に換えても増殖がおこることが明かとなった。452S/EにGATA-1を遺伝子導入することで赤血球分化が再び誘導することが可能かどうかを明らかにするためGATA-1のレトロウイルスベクターを作製した。ベクターはPGD'IRES LANTERNとpDL^+を用いた。現在実験は進行中である。 2.我々はGATA-1の下流に存在する標的遺伝子を検索する過程で、赤血球・巨核球系転写因子NF-E2の大サブユニットp45がその一つであることを見い出した。GATA-1とp45のノックアウトマウスはともに血小板造血が障害されることから452S/E細胞の巨核球分化のブロックがp45を強制発現することで解消することで可能かどうかを解析する予定である。
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