造血幹細胞/前駆細胞上のサイトカインレセプターの発現およびその生物学的意義についてはほとんど解っていない。今回、ヒト骨髄およびG-CSF投与後の末梢血中のCD34^+細胞上のG-CSFレセプター(G-CSFR)と血球分化能との関係を解析した。G-CSFRの発現をフローサイトメトリーを用いてCD34、CD33、CD38と組み合わせて解析した。また、CD34^+/G-CSFR^+およびCD34_+/G-CSFR^-細胞を各々FACSソーティングした後、SCF、IL-3、IL-6、G-CSF、EPO、TPO存在下でメチルセルロース培養し、造血能を比較検討した。G-CSFRの発現は骨髄中のCD34^+細胞の14.9±4.9%に認められ、そのほとんどがCD34^+CD33^+、CD34^+CD38^+細胞分画に存在していた。CD34^+/G-CSFR^+細胞からは骨髄球系コロニーのみが形成されたのに対し、CD34^+/G-CSFR^-細胞からは赤芽球系コロニー、巨核球系コロニー、混合コロニーが形成され、骨髄球系コロニーはほとんど形成されなかった。CD34^+/G-CSFR^-細胞をサイトカイン存在下に5日間液体培養すると、CD34^+/G-CSFR^+の骨髄球系前駆細胞が産生された。G-CSF投与後の末梢血中のCD34^+細胞中のG-CSFRの発現は10.8±5.8%に認められ、CD34^+/G-CSFR^+細胞からは骨髄球系コロニーのみが形成されたのに対し、CD34^+/G-CSFR^-細胞からも少数の骨髄球系コロニーが形成された。以上の結果より、G-CSFの骨髄球系造血作用はG-CSFRを発現している骨髄球系前駆細胞に依存しており、G-CSFの造血前駆細胞の末梢血への動員はG-CSFの間接的作用であると考えられた。
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