研究概要 |
Sandhoff病マウスを用いプラスミドによる遺伝子治療を試みた。以下、概要を記す。 1、発現プラスミドの作製;発現の高いプロモーターの検討を行った。CMV,CAGプロモーター下にHEXB遺伝子またはHEXA遺伝子を繋げてCOS7細胞に発現させ、hexosaminidase活性を調べた。その結果、CAGの方がCMVより約5倍の強い活性が見られた。 2、in vivo gene ther apy;カチオン性脂質DMRIEC(GIBCO BRL)を用いCAG-HEXA及びCAG-HEXBを同時に尾静注し、主要臓器でのヘキソサミニダーゼA活性を導入後3日、5日、7日で測定した。導入後3日目で活性のピークを認め、脳以外の臓器(肺、心臓、腎臓、肝臓、脾臓)で10-34%の活性を認め、治療に必要とされる10%以上のレベルであった。更に肝臓で蓄積したGM2が分解していることを確かめるために、導入後の肝臓のガングリオシドの分解を導入後3日、7日で検討した。その結果、導入後3日ではGM2、GA2はそれぞれ約1割、5割代謝され、導入後7日では各6割、7割が代謝されていた。ガングリオシドの分解は酵素活性のピークより遅れて認められた。導入後7日のマウスの肝臓を抗GM2抗体を用いて染色したところ、ほぼ一様にGM2が分解され、無治療のコントロールに比べ染色性は低下していた。 以上の結果よりプラスミドを用いた遺伝子治療は、中枢神経以外では酵素活性がある程度認められ、中枢神経系に異常のないタイプのライソゾーム病に対し、ある程度の期待が出来るのではないかと思われる。今後は更に反復投与や、胎児期治療による有効性を検討し、更に中枢神経への遺伝子導入法も検討していきたい。
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