細胞障害性Tリンパ球により認識される腫瘍退縮抗原遺伝子MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE-1の神経芽腫における発現を、細胞株15株および新鮮腫瘍組織48例についてRT-PCR法を用いて検討した。 [方法]神経芽腫細胞株15株をRPMI1640にて継代培養し、AGPC法を用いてtotal RNAを抽出し、oligo dT法によりcDNAを作製し、RT-PCR反応を行い、エチジウムブロマイドを含有したミニゲルを用いて泳動して目的遺伝子由来のRNAの発現の有無を検討した。また神経芽腫患者から切除した直後に液体窒素を用いて凍結し、-80度で保存した新鮮腫瘍組織48例を用いて同様の方法で検討した。また、腫瘍退縮抗原遺伝子の発現と患者の背景との相関を検討し、神経芽腫の抗原性について考察した。 [結果と考察]腫瘍退縮抗原遺伝子MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE-1はそれぞれ、細胞株15株の33%、33%、33%、47%、0%に、新鮮腫瘍組織48例の48%、35%、65%、44%、0%に発現を認めた.新鮮腫瘍組織におけるいずれかの腫瘍退縮抗原遺伝子の発現率はmycNの発現率(p=0.019)および臨床病期分類の進行度(P=0.04)と逆相関しており、どの腫瘍退縮抗原遺伝子も発現していない神経芽腫は宿主抗腫瘍免疫応答から逃れ、侵襲的に増殖する可能性が考えられた.腫瘍退縮抗原遺伝子の発現と予後に直接の関連は認めず、腫瘍退縮抗原を認識する抗腫瘍免疫反応は予後に影響を与えるほど強くないことが示唆された。いずれかの腫瘍退縮抗原遺伝子を発現する神経芽腫新鮮腫瘍組織は約90%と効率で、腫瘍退縮抗原を標的とした免疫療法は神経芽腫に対しても応用しうると思われた.
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