昨年報告したが、細胞障害性Tリンパ球により認識される腫瘍退縮抗原遺伝子MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE-1の神経芽腫における発現を新鮮腫瘍組織48例についてRT-PCR法を用いて検討したところ、新鮮腫瘍組織におけるいずれかの腫瘍退縮抗原遺伝子の発現率はmycNの発現率(p=0.019)および臨床病期分類の進行度(p=0.04)と逆相関していた。どの腫瘍退縮抗原遺伝子も発現していない神経芽腫は宿主抗腫瘍免疫応答から逃れ、侵襲的に増殖する可能性が考えられたが、神経芽腫例における腫瘍退縮抗原遺伝子の発現とその予後に直接の関連は認めなかった。 神経節腫は良性腫瘍として位置づけられてきたが、近年、神経芽腫や神経節芽腫が分化することによって神経節腫となることは稀ではないことが明らかとなってきた。腫瘍退縮抗原遺伝子の発現と予後の関連性についての検討の一環として、神経節腫における腫瘍退縮抗原遺伝子の発現をRT-PCR法を用いて検討した。 [結果と考察]腫瘍退縮抗原遺伝子MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE-1はそれぞれ、神経節腫新鮮腫瘍組織4例の25%、25%、25%、0%、0%に発現を認めた。腫瘍退縮抗原遺伝子の神経節腫での発現頻度は低く、腫瘍退縮抗原遺伝子の発現した神経芽腫が、分化して神経節腫になる傾向があるとは考えられなかった。 また、MAGE-1陽性の神経芽腫患児由来の細胞株と患児リンパ球を10%FCS+10%ヒトAB血清+IL-210U/mL加RPMI1640存在下に混合培養して、細胞障害性Tリンパ球の誘導を試みたが、今のところ細胞株は樹立できていない。
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