研究概要 |
夜尿症は5〜9歳児の11%にみられ、小児において最も頻度の高い疾患である。夜尿症の多くは心理的要因の影響が強いが、最近になって、夜尿症の約65%は常染色体優性(浸透度90〜95%)の遺伝形式をとると報告された。家系調査の結果から、夜尿症と連鎖する染色体領域はこれまで4ヶ所同定された。このうち、22q 11.2に連鎖しているものは、領域がさらに細かく限定でき、22q 11.2上に位置するDNAマーカーD22S446およびD22S343の間で最も高い連鎖を示した(ロッドスコアー4.51)。 本申請者らは本研究期間内に夜尿症領域、D22S446-D22S343を完全にクローン化し、このゲノムの塩基配列を決定した(Dunham,I.et al.,1999)。その結果、夜尿症領域は全体で約4メガベースであることが判明した。このうち約900kbは免疫グロブリンλ遺伝子(Igλ)領域である。この領域には119個のVλ遺伝子および偽遺伝子、それぞれ7個のJλ、Cλ遺伝子および偽遺伝子が存在するが、これらが夜尿症の原因遺伝子であるとは考え難い。また、Igλ遺伝子座の中には合計2個のIg関連遺伝子も存在するが、これらも夜尿症原因遺伝子とは考え難い。しかしIgλ遺伝子座には4個のIgとは無関係な遺伝子が存在し、これらは夜尿症原因遺伝子の候補である(Kawasaki,K.et al.,2000)。また、Igλ遺伝子上流、および下流領域にはさらに数多くの遺伝子が存在し、これまでに少なくとも22個の遺伝子を同定した(Dunham,I.et al.1999)。今後はこの領域にさらに多くの遺伝子を同定し、夜尿症との連鎖解析を行う予定である。
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