研究概要 |
Sly病の遺伝子治療を目的とした新しい遺伝子導入法として、今回バキュロウイルスを用いた系を検討した。更にin vivoでの神経細胞への遺伝子導入の前段階としてラット神経系初代培養細胞への遺伝子導入をpseudotypeを用いて検討した。方法としてはまず、Sly病の欠損酵素であるβ-glucuronidase発現遺伝子(HBG)を挿入した組替えバキュロウイルスをヒト肝細胞癌セルラインであるHepG2に感染させその導入効率を検討した。またLacZ,VSVG(水泡性口内炎ウイルス糖蛋白発現遺伝子)を組み込んだpseudotype baculovirusをRat primary mixed glial cultureに3日間感染させたあとβ-galおよびGFAPの二重染色を施行。Double positive cellを検討することによりアストロサイトへの導入を検討した。 結果はCAGプロモーターを持つ発現ベクターを用いてHepG2に感染させた場合mock41nmol/mg/hrに対し223-1397nmol/mg/hrと高い導入効率を得た。またpseudotype baculovirusをRat primary mixed glial cultureに感染させた結果、全アストロサイト(n=500)のうち4.7%にlacZの導入が確認された。今回バキュロウイルスを用いた系として初めて神経系初代培養細胞への遺伝子導入に成功した。その機序としてpseudotypeにすることにより宿主細胞内での小胞体などへの取り込み率が低下するため導入効率が上昇すると考えられた。これはバキュロウイルスを用いた系におけるin vivoでの神経系細胞への遺伝子導入の可能性を示唆する結果であり、今後HBGを組み込んだpseudotype baculovirus等を用いて更なる検討を続ける予定である。
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