ヒトWilson病の遺伝子を用いて、蛋白を合成しそれに対するポリクローナル抗体を作製、精製した。具体的には構造遺伝子上6つある銅結合部位のうち4から6までにわたって遺伝子をサブクローニングし大腸菌の発現ペクター(expression vector)に組み入れ蛋白を合成した。その蛋白をニトロセルロース膜に電気泳動し、溶出した溶液を野兎に免疫(合計3回)し、その血清からポリクローナル抗体を得た。抗体を用いて培養細胞(Hepg2 cell)の蛍光抗体を用いた免疫組織染色を行ったところおもにゴルジ体からエンドソームにかけてWilson病の蛋白の局在が認められた。これはマンノース6リン酸受容体蛋白などのtrans Golgi networkを中心とする膜蛋白の分布と一致し興味深い。さらに抗体の特異度を高めるためにprotein A beadsを用いたaffinity purificationを行い使用したところ、上述した部位にさらにシャープな局在が認められた。またWilson病患者の生検肝5検体と正常コントロール肝2検体をInformed concentを得たうえで免疫組織染色を行った。Wilson病患者の肝臓は肝硬変が進行しておりシグナルに特異性は認めなかった。正常コントロール肝では細胞内に集積が認められたが核周囲から細胞質全体に広がりHepG2 cellほどの特異性はみられなかった。これに対してヒトアルブミンなどを用いてblocking(全処置)を工夫したが難航した。これは背景シグナルの除去の安定化に問題があり、除去が困難な場合抗体特異性の面からモノクローナル抗体の作製が組織におけるWilson病蛋白の正確な局在を調べる上で必要と考えられた。
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