研究概要 |
1.アトピー性皮膚炎(AD)患者と水疱性類天疱瘡(BP)におけるCCケモカインとそのレセプターの分布 上記皮疹を用いて,好酸球浸潤に関与するCCケモカインであるeotaxinとそのレセプターであるCCR3について,免疫組織学的に検討した. AD皮疹では,eotaxinが表皮細胞に発現していることが明らかとなり,これは特に好酸球浸潤が強く認められる痒疹型の皮疹で強かった.CCR3は健常人でも表皮細胞や真皮線維芽細胞にも発現を認め,AD皮疹では発現が増強した.炎症細胞の一部にも発現が見られた。表皮細胞におけるCCR3発現の意義は不明であり,今後検討する必要がある. BPにおいては,水疱蓋及びその周囲の表皮細胞に強いeotaxinの発現がみられた.さらに水疱内容液中のeotaxin濃度をELISA法にて測定したところ,対象とした熱傷水泡液などに比べ有意に高値を示した.以上から,ADやBPの好酸球浸潤にeotaxinが関与していることが示唆された. 2.AD患者末梢血単核球上のケモカインレセプターの分布 AD患者と健常者の末梢血単核球(PBMC)を用いて,細胞表面上に発現しているCCR4,CXCR3についてフローサイトメトリー法にて検討した.AD患者のPBMではCCR4の発現率がが健常人に比べ有意に高値を示した.さらにこれは患者皮疹の重傷度と相関した.ヘルパーT細胞(Th細胞)は最終的にIFN-γを産生するTh1細胞とIL-4などを産生するTh2細胞に分化するが,アレルギー性炎症においては,Th2細胞に比較的特異的に発現するCCR4の発現率がADに特に高いことやADの重傷度と相関しうることは,ADの病態形成にCCR4陽性細胞が重要であることを示していると考えられる.
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