研究概要 |
マウス胎児表皮の分化に伴い発現が変化する遺伝子をRNA differential display法により単離し、その解析を行っている。その一つとして、4A40としている遺伝子は約12kbの非常に大きい転写物で、単離したcDNAから推測されるのは、N端にカルシウム結合領域であるEFハンド領域があり、これに続いて約170アミノ酸を一単位とする繰り返し配列が20回現れる。この遺伝子の発現をIn situ hybridizationにより確認したところ、顆粒層で強いことが明らかとなった。さらに、N端、C端および繰り返し配列領域の3種の組み替え蛋白質を大腸菌で発現させて、これをウサギに免疫してポリクローナル抗体を作製した。これらの抗体を用いて免疫染色を行ったところ、3種のいずれの抗体によっても表皮の顆粒層、角質層で陽性像を得た。この分子の構造および発現細胞等の特徴はプロフィラグリンに類似し、角化細胞における役割についても最終分化である角質形成に関わる可能性が示唆された。現在、この分子の細胞内での局在や動態を解析するために培養細胞に遺伝子を導入して検討を行っている。 もう一つの分子tpis(4A50)については、皮膚を含めた主要臓器について発現を検討したところ、皮膚、食道、舌といった角化重層上皮の他に、小脳、精巣にも強い発現が見られた。この分子は蛋白-蛋白相互作用に関わるtetratricopeptide repeat(TPR)を持ち、精巣での発現は、あるステージの精母細胞に限定していた。これらの結果は、Biochem.Biophys.Res.Commun,1999,Oct.14;264(1):81-85に報告した。皮膚あるいは小脳での詳細な検討は現在進行中である。
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