強皮症のモデル動物であるTskマウスを用い、皮膚の病態と肥満細胞数、キマーゼ酵素活性との相関を経時的に解析した。さらに、皮膚、皮下のキマーゼmRNA発現レベルを競合的 RT-PCR法で定量した。1.背部皮膚は下床との可動性が制限され、組織学的には、真皮に加え皮下線維組織層の肥厚がみられた。特に皮下線維組織層は、5週齢より対照マウスに比べ有意に肥厚しており、さらに週齢を増すごと厚みを増し、その差は著明となった。対照群では加齢の影響は受けず、各週齢で変化がなかった。真皮ヒドロキリプロリン濃度は、10週齢以降のTskマウスで有意に増加し、生化学的にも真皮のコラーゲン増加が示された。2.これらの病変部では5週齢より肥満細胞数が対照マウスに比べ増加し、キマーゼ酵素活性の有意な上昇を伴っていた。3.10週齢Tskマウスの皮膚を用い、キマーゼサブタイプのmRNA発現を定量した。皮膚肥満細胞に特異的なマウスマストセルプロテアーゼ(MMCP)-4および未分化肥満細胞型であるMMCP-5の発現が示されたが、粘膜肥満細胞型のMMCP-2は検出されなかった。対照に比べ、MMCP-4mRNAは有意に高い発現レベルを示した。一方、MMCP-5 mRNAの発現は、MMCP-4に比べて少なく、また対照との間に有意な変化はみられなかった。皮膚の線維性増生とその病変局所での肥満細胞数、キマーゼ酵素活性の上昇に相関があることが証明された。ヒトキマーゼは結合組織の肥満細胞のみに発現するため、皮膚肥満細胞に特異的なMMCP-4の発現量と特に相関があったことは強皮症の病態生理に重要な意味を持つと考えられた。さらに、経口投与により正常マウス皮膚のキマーゼ活性を抑制する阻害薬をスクリーニングした。12年度はこのキマーゼ阻害薬の治療効果を検討していく。
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