これまでに慶應義塾大学病院皮膚科外来を通じて集積した非Herlitz致死接合部型および劣性栄養障害型表皮水疱症患者の表皮細胞を用いて、それぞれの表皮細胞におけるよりよい培養条件の設定を試みている。具体的には、培地の種類、継代培養の時期や回数、培養液中のカルシウム濃度などの条件ををそれぞれ数種類設定し、これらを組み合わせて設定した培養条件下での患者表皮細胞の増殖を観察し、正常ヒト表皮細胞と比較検討した。これまでのところ、一般的な正常ヒト表皮細胞の培養システムの条件と比して、患者表皮細胞の増殖速度を有意に高める培養条件は見いだされていない。また、細胞の状態に関しても、有意差を認める培養条件は得られていない。重層化に関しても同様な各患者表皮細胞を用いた検討を行っているが、重層化を有意に促進する、あるいはより強固にするような条件の設定には至っていない。個々の患者における培養条件の設定に関しては、非Herlitz致死接合部型と劣性栄養障害型の間ではその患者表皮細胞の増殖態度に多少の差があることがわかった。しかし、同じ病型の各患者表皮細胞の増殖態度に関してはこれまでのところ有意な差は得られていない。今後、培養条件をより細かく設定する、あるいは設定範囲を広げることにより患者表皮細胞の増殖および重層化をより促進する条件をみいだし、各患者における理想的な表皮細胞の培養ならびに培養表皮シートの作成条件の確立をめざす。
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