研究概要 |
ヒト肺癌細胞株A549を用いて,低線量率照射を41度の温度で行うと照射効果の増感が認められた.照射のみではG2ブロックが著明であったが,照射と41度の温熱を併用すると,細胞はG1期に集積し放射線抵抗性のS期細胞が減少した.もう一つの増感効果の機序としてHSPの発現抑制による熱耐性の抑制が考えられた.低濃度のカフェインによる照射効果の増感は,照射によりG2期に集まった細胞の回復を阻害したまま細胞周期を進行させ,細胞死へ導いたためと考えられた.照射,41度,カフェインを同時に行うと細胞死はさらに増強し,細胞周期の変化は強いG1ブロックであっが,ウエスタンブロットによるHSP72/73の解析では,三者の併用はHSPの産生を抑制する結果が得られた.また微小管重合を阻害し細胞をG2期に集積させるタキソールとメチルキサンチンを同時に作用させると,結果として殺細胞効果を減少することが明らかとなり,メチルキサンチンにより起こるG1 blockが,細胞のG2期への集積を減少させたためと考えられた.現在は,慢性熱耐性の抑制による,放射線照射,温熱や化学療法の効果の修飾について研究を進めている.初期の知見では,殺細胞効果の認められない41度程度の温熱でも,慢性熱耐性の抑制により強い殺細胞効果が認められることが明らかとなった.細胞の増殖シグナルの違いが放射線増感効果の違いとして現れる可能性があり,細胞周期との関連を検討中である.
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