腫瘍の良悪性や周囲組織への浸潤は、触診上硬度の違いとして認識される場合が多い。しかし、現在の画像診断は腫瘍の硬度を反映する方法が無く、触診による診断法より劣っている。本研究は腫瘍の硬度差を加味した画像の作成を目的に行った。昨年度は、至適低周波振動発生装置の開発を行い、ファントーム用いて、超音波パワードプラーにより検出可能な動きの波長、出力等について検討した。本年度は昨年度作成した低周波発生装置を用いて、各種の硬度を持つ寒天中に、異なる硬度を持つ軟部組織と同様な物質を埋没し、硬度の異なるファントームを作成した。このファントームに低周波を与え、その時の変化をパワードプラーで撮像した。振動には縦方向と横方向があるが、このシステムでは縦方向の振動を極めて良好に画像化できた。約10nmの位相のずれを画像として描出した。しかし、横方向の位相のずれを画像として描出することは困難であった。また、工学的に算出される位相のずれと、画像化されたものの関連にしての検討も行っているが、両者の関係を明確にするには至らなかった。縦方向の位相のずれはパワードプラーにより検出して、画像化することは確実にできることが明らかになった。しかし、今後は工学の専門家の知識を借用し、物理学的な位相のずれと画像化されたものの相関を明瞭にし、臨床的に応用できる機器の開発を行う予定である。
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