研究課題
本年度はまず、種々のほ乳類培養細胞を用いて、44℃温熱処理後のDNA-PK活性と放射線感受性を調べた。その結果、1)げっ歯類細胞に比べてヒト細胞においてDNA-PKの温熱安定性が高いこと、2)温熱による放射線増減効果はヒト細胞に比べてげっ歯類細胞の方が大きいこと、が分かった。温熱による放射線増減効果がげっ歯類細胞に比べてヒト細胞で小さい傾向はこれまでにもしばしば指摘されてきたが、本年度の研究結果から、DNA-PKの温熱安定性の違いがその原因の1つとなっている可能性が考えられた。また、温熱によるDNA-PK活性低下の機構、種々の温度下(40℃〜45℃)でのDNA-PKの温熱安定性などについて、主にマウス線維肉腫FSA1233細胞を用いて検討を行った。その結果、1)DNA-PKのサブユニットのうち、DNA-PKcsではなく、Kuサブユニットの活性が温熱処理によって失われること、2)温度が高いほどDNA-PK活性の低下に要する時間が短くなること、3)温熱処理後、37℃に戻して培養するとDNA-PK活性の大部分が回復すること、4)温熱前処理によって温熱耐性を誘導した細胞においてはDNA-PKの温熱安定性が増大することなどが分かった。特に、3),4)の結果に関しては、温熱処理と放射線照射の間隔をあけると放射線増感効果が小さくなること、温熱処理を繰り返すと温熱耐性の獲得とともに放射線増感効果も小さくなることなど経験的に知られている温熱療法の問題点と関係している可能性が考えられた。
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