研究概要 |
温熱の放射線増感作用とDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)の温熱不安定性の関係を探るアプローチの一つとして、DNA-PKcs(触媒サブユニット)またはKuサブユニットを欠損するほ乳類培養細胞を用いた検討を行った。欠損細胞においても温熱処理による放射線感受性の増強は認められたが、放射線単独に対する感受性が非常に高いため対照細胞との比較が難しく、結論を下すにはより詳細な検討を行う必要があると考えられた。また、温熱単独処理に対する感受性の検討も同時に行った。近年、DNA-PKのサブユニットを欠損する細胞が温熱高感受性を示すという結果をいくつかの他グループが発表しているが、本研究の結果は必ずしもこれらと一致しなかった。 これまで、DNA-PKの細胞内の基質が明らかになっておらず、in situでのDNA-PK活性を評価する方法がなかった。私は、DNA ligase IVと複合体を形成し、DNA二重鎖切断修復に関与すると考えられているXRCC4タンパク質に着目し、SDS-PAGE-Western法で解析した。その結果、X線照射によって誘導されるXRCC4のリン酸化にDNA-PKcsが必要(一方、ATMは不要)であることが分かり、XRCC4がDNA-PKの細胞内での基質(の1つ)になっている可能性が示された(FEBS Lett.,2000)。この結果から、XRCC4のリン酸化を指標として、DNA-PK活性に対する温熱処理の影響をin situで調べることが可能になると期待される。
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