研究概要 |
fMRIにおける信号上昇領域を解析することで様々な脳機能の局在が画像化されている。しかし、信号上昇領域のみならず、信号低下領域、すなわち大脳皮質の抑制領域を合わせて検討することで、大脳皮質全体の機能調節が解明されると考えられる。今回、運動選択課題における脳のfMRIを行い、賦活および抑制領域の相互関係を検討した。 1.5T MRI装置を用いて6名の右利き健常被検者(男3名、女3名)に対してgradient echo type EPI(TR/TE;3600/50msec)を用いfMRIを行った。脳全体を含む12横断面を設定し3.6秒ごとに連続42回の撮像を行った。足元のスクリーンにランダムにじゃんけんの手指形状を1.5秒間隔で18秒投影し、投影された手指形状に対して、あいこ、勝ち、負け、または勝ち負け交互の応答を右手で提示する課題をそれぞれ2シリーズ行った。統計処理にはSPM96を用い、z>3.09の閾値で反応領域を同定した。課題の難易度を筋電図を用いた反応時間で半定量化した。平均反応時間はあいこ、勝ち、負け、勝ち負け交互の課題の順に延長していた(159ms,225ms,323ms,392ms)。勝ち負け交互は、あいこ、勝ち、負けに比して左中前頭回、両側下前頭回および左紡錘状回から舌状回に有意な賦活部位が認められた。抑制領域は両側前帯状回、後帯状回、島を中心にいずれの課題においても認められたが、反応時間の延長に合わせて抑制領域の範囲は増大していた。難易度が異なる運動選択課題を用いたfMRIを行うことで、大脳皮質全体における賦活および抑制の相互関係の存在が示唆された。
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