乳癌細胞(RCB1192)、脳腫瘍細胞(RCB0763)及び肺癌細胞(RCB0815)を用いて、99mTc(V)DMSA(以下DMSA)の集積および洗い出しに関する実験を行なった。 まず、生理的イオン濃度のBufferを用い、時間-集積曲線と時間洗出し曲線をそれぞれの細胞において作成した。いずれの癌細胞においても、DMSAの集積は経時的に漸増しており、全てはほぼ似た曲線を示した。洗い出しに関しては乳癌細胞・肺癌細胞では最初の10分で急速に洗い出しが見られ、後は暖徐となった。脳腫瘍細胞での洗い出しは、全体を通し暖徐であった。次いで、細胞膜にあるイオンチャンネルの関与を調べるため、それらを阻害する薬剤を加え、集積について実験した。全イオンチャンネル阻害剤として、高濃度のK+(140mmol/l)のbufferや、ウアバイン(Na+-K+ATPase阻害)の添加濃度を変化したBufferを用い実験した。これらを用いても、DMSAの集積には影響は見られなかった。DMSAの集積は、イオンチャンネルを介しておらず、もっぱら拡散によることが推察された。 蛋白との結合あるいは競合により、集積が阻害されるかを調べるため、幼牛血清アルブミンを濃度を変えて添加し、それぞれの集積・洗い出しについて実験した。この結果、蛋白添加によって有意に集積の低下が見られた。蛋白濃度と摂取率には、有意な相関は見られなかった。洗い出しに関しては蛋白添加の有無は関与していなかった。このことから、DMSAと蛋白とは、競合では無く結合により集積阻害が起こることが推察できた。 以上の実験から、1)DMSAの集積は拡散である。2)DMSAの集積は細胞外の蛋白との結合によって阻害されうる。 3)今回の3種類の細胞では、実験結果にほとんど差異が見られなかったため、DSMAは非特異的な腫瘍シンチ製剤であろうという3つの結論に到達した。
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