平成11年度は本研究の主題である成人呼吸窮迫症候群のCTを用いた画像解析を行うにあたって、そのCT画像の特徴を明らかにするために臨床例における検討を行った。まず成人呼吸窮迫症候群を呈した症例25例と同じく急性の呼吸不全に陥るが原因が不明である急性間質性肺炎を生じた症例25例の計50例のCT画像を集めて、その画像所見を検討した。方法としては二人の放射線科専門医がそれぞれにすべてのCT画像の読影を行った。その結果を集計して統計解析を行い、スリガラス陰影や浸潤影、小葉間隔壁の肥厚像、牽引性気管支拡張像、蜂窩肺、小葉内線状影、小葉中心性結節などのCT所見とその程度や分布、またその発症からCT撮像までの時期によってこれらの所見に違いがあるかどうかを検討した。次にこれらの二つの疾患をCT画像を比較検討し、CT所見に違いがあるかどうかを詳細に検討した。その結果、スリガラス陰影は成人呼吸窮迫症候群と急性間質性肺炎のどちらかにおいてもほぼすべての症例に認められ、浸潤影や小葉間隔壁の肥厚像、牽引性気管支拡張像、蜂窩肺、小葉内線状影、小葉中心性結節についてはスリガラス陰影に比べ認められる頻度は低いものの成人呼吸窮迫症候群と急性間質性肺炎のどちらにもほぼ同程度に認められることがわかった。陰影の分布に関しては急性間質性肺炎では陰影は両肺対称性であることが多いのに対して、成人呼吸窮迫症候群では非対称性に陰影が認められることが多いのが特徴であった。
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