臨床用MRI装置をもちいてMRスペクトロスコピーを測定し、脳内グルコース及び乳酸の代謝評価を試みる。まずグルコース及び乳酸の信号の測定法について検討し、至適測定パラメーターを決定する。グルコースについては食事後の変化について正常者で測定し濃度変化を検討した。乳酸については変性疾患と脳虚血性疾患についてMRSで脳内乳酸の信号変化を測定し、変性疾患については血中及び髄液中乳酸値と比較した。脳虚血性疾患では拡散強調画像や脳灌流と比較し、臨床有用性について検討した。 1)グルコースと乳酸の測定方法:グルコースはT2緩和時間が短いために、短いTEを用いないと評価困難であった。乳酸はT2緩和は比較的長く、短いT2時間の脂肪と区別するためには長いTEの方が区別が明瞭であった。 2)食事による脳内グルコース濃度の評価:グルコースの信号はタウリンやイノシトールの信号と重なり、単独では評価困難であるが、正常者においては食事後にグルコースの濃度変化と考えられる信号の上昇がみられた。定量では2-4mM程度の増加であった。 3)変性疾患の乳酸測定:Leigh脳症やメチルマロン血症において病初期に明瞭な乳酸の信号が認められ、治療により減少していく経過が確認できた。髄液中の乳酸値との良好な相関が認められた。 4)急性期脳梗塞の評価:乳酸は拡散強調画像の範囲よりも広く認められ、灌流の範囲との相関が認められた。虚血程度と乳酸上昇に相関が存在することが示唆されたが、今後定量評価も含めて検討が必要である。 本年の検討ではfunctional MRIとの比較検査が十分に行えなかった。また患者でのグルコース評価は行えていない。研究期間の後半である来年度に重点的に行う予定である。
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