研究概要 |
化学療法に対する多剤耐性の機序は複雑で様々なメカニズムが考えられ、その一つに腫瘍細胞の細胞膜に存在するmulti-drug resistance(MDR)の関与が示唆されている。^<99m>Tc-MIBIはMDRで排泄される薬剤の一つとされ、^<99m>Tc-MIBIを用いたシンチグラムで集積の低いものはMDRの機能が亢進していると考えられ、ある種の抗癌剤に耐性を示すものと推察される。その一方で,verapamilなどのカルシウム拮抗薬に多剤耐性克服薬剤としての作用が報告されている。多剤耐性腫瘍に耐性克服薬剤を用いて、^<99m>Tc-MIBIの腫瘍細胞への取り込みの変化を観察し、耐性克服薬剤の影響をin vitroで検討を行った。 方法はヒト由来の癌細胞であるSNB19を用い抗癌剤であるvincristineの存在下で培養を行い、耐性株を樹立した。Reverse transcriptase polymerase chain reaction法を用いて、MDRの発現の有無を調べたところ、耐性細胞はMDRが発現し、親株であるSNB19細胞はMDRの発現は確認されなかった。次に上記細胞内への^<99m>Tc-MIBIの取り込みをautowell scintillation counterで調べた。SNB19感受性細胞への^<99m>Tc-MIBIの取り込みは10分の反応で7%で、60分で12%とほぼプラトーに達した。これに対し耐性細胞では、^<99m>Tc-MIBIの細胞への取り込みは5%で感受性細胞に比べ低値を示した。verapamilを加えた検討では、SNB19感受性細胞では^<99m>Tc-MIBIの細胞への取り込みはverapamil添加前後で変化はなかったが、耐性細胞では30分頃より^<99m>Tc-MIBIの細胞への取り込みが亢進し90分では感受性細胞とほぼ同様の取り込みを示した。 以上の結果より、^<99m>Tc-MIBIの細胞内への取り込みはMDR発現の有無を反映し、更に多剤耐性克服薬剤を用いることで耐性克服薬剤の影響を同時に調べる事が可能と推察された。
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