研究概要 |
放射線照射による癌細胞の細胞死に於けるテロメア/テロメアーゼの関わりを解明する第一歩として、次の様な実験を行った。即ち、卵巣癌由来の腺癌細胞2種、子宮頚癌由来の扁平上皮細胞5種、ぼうこう癌由来の移行上皮癌細胞3種の培養細胞に対して種々の線量(0.5Gy,1Gy,2Gy,5Gy,10Gy,20Gy)でX線照射を行い、コロニー法にて生存曲線を求めて放射線感受性を調べた。この結果は、何れの培養細胞でも、照射線量と生存率との間に負の相関関係が認められ、従来の報告や我々の実験結果と一致していた。また、上記の各種線量にて照射後の培養細胞毎に、フローサイトメーターを用いて細胞周期の解析とアポトーシス発現頻度の解析を行った。この結果も、照射線量とは負の相関関係を示した。一方で同時に、照射線量とテロメラーゼ活性の低下の相関関係を検討するため、上記10種の培養細胞を照射した後にIn situ TRAP法にてテロメラーゼ活性を測定の測定を行った。しかし、照射線量とテロメラーゼ活性値の間に負の相関関係やその他の一定の関係を見いだすことは出来なかった。この理由の一つとして、In situ TRAP法の操作上の問題が考えられた。すなわちIn situ TRAP法では、一つのスライドグラス上で一連の処理が行われるために、PCRを行う際に、TSプライマーによる伸長反応を免れたテロメラーゼ活性の不活化が十分でなかったことが考えられた。また、蛍光顕微鏡を用いてその活性を測定するIn situ TRAP法では、個々の細胞毎でのテロメラーゼ活性の測定には有用であるものの、定量化が難しいことも原因の一つと考えられた。ある一つの細胞株より継代した培養細胞は全ての細胞が等しくテロメラーゼを持っているはずであり、個々の細胞に於けるテロメラーゼ活性を測定するIn situ TRAP法よりは、特定の蛋白質あたりで活性を半定量的に測定する従来のTRAPアッセイが、今回の実験系では好ましい方法であると考えられた。平成12年度では、このTRAPアッセイを用いて再び照射線量とテロメラーゼ活性の相関関係を検討する予定である。
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