近年、本邦ではMRIを用いた脳ドックの普及に伴い未破裂で発見される脳動脈瘤症例が増加している。脳出血、くも膜下出血にて発症する破裂動脈瘤の治療方針は明確であるが、無症候性の未破裂動脈瘤症例の治療指針は今だ明確なものは確立されていない。従来、脳動脈瘤の確定診断は血管造影法とされてきたが、その合併症はおよそ1%と報告され無症候の症例に施行するには侵襲的な検査法と考えられている。これに対してらせんCTを用いた3D-CTAは、経静脈的な造影剤投与で数十秒の撮像時間で検査を終了できる低侵襲的な検査法であり、周囲血管と脳動脈瘤の空間的な評価や脳動脈瘤自体の三次元的な形態診断を可能とし、その診断精度は血管造影を凌ぐとも報告されている。こうした臨床的背景に基づき、当院では脳動脈瘤の診断に3D-CTAの臨床応用を積極的になってきた。平成11年度は、過去に3DーCTAが施行され脳動脈瘤の診断が得られた症例のデータベースを作成し、未破裂動脈瘤と破裂動脈瘤の比較・検討を開始した。また、平成11年度より当院で臨床応用が開始された多検出器型らせんCT(以下、MD-CT)は、従来のらせんCTと比べ短時間で広範囲の撮像を可能とする新しいCT装置であり、これを用いて作成される三次元画像は従来のらせんCTのものと比べ画像精度の向上が期待されている。平成11年度は、MD-CTを用いた頭部3D-CTAの至適な撮像条件や造影方法について検討を行った。また、脳動脈瘤の破裂を予測するために、脳動脈瘤の瘤内血流を評価する目的で行うダイナミックCTの撮像・造影条件の設定について検討を行った。
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