乳房温存術後放射線治療(切線照射)後におこる副作用について、特に肺・皮膚への影響に関し検討した。 -皮膚障害について- 乳房温存術後の患者に対し、放射線治療前・治療直後・1〜2週間後・1か月後・3か月後・6か月後・12か月後についての皮膚の状態をポラロイド写真にて撮影し、皮膚温を測定し、客観的に評価した。色素沈着のうち急性期に見られる発赤や点状のものは治療直後より1週間後に、一時的に増強することがあり、2週間後には徐々に改善、沈静化してくる。この間はステロイド軟膏にてfollowし、このころより、患部の洗い方を指導する。1か月後は皮膚の代謝がよくなり、比較的淡い色素沈着に変化してくるので、1〜3か月後より、クリニカルマッサージを指導していく。3〜8か月後頃は、乳房の皮膚肥厚と浮腫が起ることがあり、クリニカルマッサージを施行しなかった患者と施行した患者とでは、皮膚の回復に差がみられた。また、同時期に患側上肢の浮腫が出現した場合には、同部位のマッサージも加えることで上肢の運動域が改善された。 -肺障害について- 放射線治療前・6か月後・12か月後の胸部CT(HRCT)を撮影し、その変化を7Typeに分類した。また、24か月後・36か月後についての晩期の変化についても検討した。この結果、切線照射による肺の変化は症例の約86%に出現し、そほほとんどが照射野内であり、臨床上問題になることはなかった。しかし、経過中、照射野外に出現する特種な肺野所見を有する症例があり、全国へアンケート調査を行ったところ、157施設のうち106施設(67.5%)の回答を得ることができ、約0.4%の確率で起り、その約84%は6か月以内に出現することがわかった。
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