脳血管性虚血性神経細胞喪失の核医学画像化として抑制性神経細胞受容体のひとつであるγ-アミノ酪酸(GABA)-ベンゾジアゼピン受容体マッピングが提唱されている。本研究の目的は、右中大脳動脈閉塞ヒヒモデルを用いて、ベンゾジアゼピン受容体の特異性リガンドのひとつであるフルマゼニールに陽電子放出性核種であるCarbon-11(C-11)を標識し、インビボ(in vivo)で、その皮質集積を定量検討、さらに、脳神経病理像の対比により、虚血性神経細胞喪失のマッピングの意味を検討することである。本年度は、ヒヒ5例に経眼窩的アプローチにて右中大脳動脈の永久閉塞手術を行い、3ヶ月以降にC-11-フルマゼニールポジトロン核医学画像(PET)検査および形態学的変化を把握する核磁気共鳴画像(MRI)検査を施行した。さらに、ヘマトキシリン-エオジン染色脳病理標本を作成した。MRI上、ヒヒ3例に右基底核部に梗塞病変を認めた。MRIを基準にして再構成した冠状断層脳PET画像での関心領域(ROI)解析により、ヒヒ4例において、その右頭頂葉皮質にC-11-フルマゼニール集積の特異的低下を認めた(右側に対して10%程度)脳病理標本解析では、脳PET画像上、C-11-フルマゼニールの皮質集積低下を示した部位で、神経細胞に有意な病理学的変化は認められなかった。これにより、ベンゾジアゼピン受容体マッピングは必ずしも脳血管性虚血性神経細胞喪失を意味しているものではないことが示唆された。
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