1.ACTE IIIの脳局在に関する検討 ACTE III cDNAに対して特異的なRNAプローブを作製し、ヒトの脳外科切除神経組織をクライオスタットを用いて凍結薄切切片とし、上述のプローブとともにハイブリダイゼーションに供した。その結果脳組織内に、広範にACTE III mRNAが発現していることがわかった。さらにハイブリの条件を検討し、また免疫染色を行って、脳内のACTE IIIの発現分布を詳細に検索したところ、ACTE IIIは、脳内の様々な組織切片に広範に発現しており、部位特異性は有意には認められないことがわかった。 2.ACTE III高発現培養細胞内における細胞内情報伝達調節分子の局在・機能変化に関する実験 ACTE III遺伝子を導入、大量発現させた細胞を用いて、ACTE IIIがG蛋白質αサブユニットやSrc型チロシンキナーゼを基質とするか検討した。この方法を用いた実験結果からは、ACTE IIIが、これらの情報伝達にかかわる蛋白のCys残基にチオエステル結合したアシル基を加水分解するという証明は得られなかった。 しかしながら、ACTE IIIは細胞内小器官のミクロソーム分画に存在し、ACTE IIIをtransfectionした細胞では、電子顕微鏡的に脂肪滴が著しく増大することから、脂質の貯蔵や代謝に重要な役割を担っていることが示唆され、細胞の老化や細胞死などの臨床病態との関連について、今後も発展的に検討していく意義があると考えられた。
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