家族研究、養子研究、双生児研究など、これまでの臨床遺伝学研究により精神分裂病発症への遺伝的要因の関与が明らかとなってきている。近年は分子遺伝学研究が中心に行われており、精神分裂病原因遺伝子の同定の努カが世界的になされている。本研究代表者もこれまでに精神分裂病と候補遺伝子の関連研究を行い、14-3-3蛋白遺伝子の多型と精神分裂病発症に有意な関連を見いだした。しかしながら、これらの努力にも関わらず現在のところ広く一致した所見は得られておらず、精神分裂病原因遺伝子はいまだに同定されていない。これは本疾患のそれぞれの症例における異質性、診断の問題、本疾患の生物学的モデルの不完全さに起因している。 疾患の異質性を排除するために同一の大家系の中で罹患者が多発しているものを対象とすることが最も適切と考え疫学調査を行った。これによって精神分裂病多発大家系を発見したので、今年度はこの家系を対象に家族からの聞き取り調査、カルテ調査、構造化面接による臨床診断および末梢血からのDNA抽出を行った。27人の家系構成員のうち生存者は18人であった。DSM-IVにより精神分裂病と診断できた症例は10人で、うち6人が生存しておりこの6人全員からDNAを採取できた。他の構成員では精神遅滞が1名、アルコール依存症が1名いた。人格障害の存在は確認できなかった。この家系の計16人からDNAを採取できた。また採取したリンパ球を芽球化保存してあり、将来の解析に使用できるようにした。 現在、全染色体にわたる約400個のマイクロサテライトマーカーを用いて遺伝子型を決定するゲノムスキャン作業を始めたところである。平成12年度中に残りの構成員の調査及び採血をおこない、ゲノムスキャンを進め解析を終了したい。
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