左右大脳半球間に機能的側性を認める言語・道具使用に関する認知過程は、精神神経科疾患における症状の基盤となる過程であり、その病態解明に不可欠である。本研究の目的は、そのうち道具の使用動作遂行について、従来検討されてきた臨床神経心理学的研究による知見と、近年盛んになりつつある機能画像所見との整合性を見いだし、その神経基盤を明らかにすることにある。そのため本研究は、臨床研究並びに、健常者を対象としたPET賦活試験の2つから構成されている。 1.臨床研究では、右半球が道具使用の基本的能力である、遠隔操作動作を構造化しうることを検証するための行為検査並びにプロトコールを作成し、これに基づいて左半球ほぼ全域脳梗塞例1名についてすでに検討し、その一部は誌上にて報告した。詳細については現在も解析を続けている。 2.道具使用の実現には、その動作のパントマイム時とは異なった神経機構が関与していることを検証するため、PET賦活試験では、11年度初頭に課題のプロトコール考案、並びに購入した画像処理用コンピュータ、デジタルカメラ、刺激材料、並びに画像処理ソフトを用いて課題素材を作成した。これらを用いて右利き健常者8名(当初予定では、本年度3名)についてインフォームドコンセントを得た上で、本課題を実施した(H_2^<15>O使用・90秒・4課題×3/人)。使用手は全例右手。現在得られたデータについて、Statistical Parametric Mapping(SPM)法を用いたデータ処理を行っている。
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