本研究においてサイトカインに対する内因性神経活性物質の動態解析を行う初期段階として、現在までにIL-1βによるラット前頭前野カテコールアミン、特にノルアドレナリン(以下NA)の動態を脳内微小透析法を用いて検討した。IL-1βによって引き起こされるラット前頭前野NAの2相性の増加には、一酸化窒素(以下NO)、プロスタグランジン、グルタミン酸が関与していることが考えられた。また、このIL-1βによる前頭前野NAの2相性の増加は、グルタミン酸アンタゴニストにより完全にブロックされることから、グルタミン酸の関与が明らかになった。 このため、今回、研究室に設置してある脳内微小透析法のシステムにて、無麻酔・自由行動下のウィスター系ラットの前頭前野、視床下部、海馬におけるグルタミン酸遊離の経時的動態の解析を試みた。 細胞外液中のグルタミン酸濃度の測定系として、グルタミン酸オキシダーゼを封入した酵素カラムを経てグルタミン酸より生成されるH202を白金電極を用いて検出するという方法を新たに確立した。この測定系では、50nM以下のグルタミン酸濃度の高感度測定が可能であるため、透析液の採取に要する時間が30分から10分に短縮することが出来た。測定されたグルタミン酸濃度は高K刺激に反応することを確認しており、現在、さらにcharacterizationを進めている。 今後は、前頭前野皮質グルタミン酸ニューロンを標的とするサイトカインの生理的作用をin vivoの実験系を用いて解明していく予定であり、具体的には最近注目されている抗不安作用を有するCRFアンタゴニストがニューロン活動と連関したグルタミン酸遊離にどのような影響を与えるかを検討する。
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