研究概要 |
本年度は「アルツハイマー病脳におけるCdk5活性と神経原線維変化形成との関連」の研究の条件決定を中心に行った。関連病院で死亡した痴呆患者及び痴呆のない老人の剖検脳の右側の嗅内皮質の組織約1gを切り出し、皮質と白質にわけ各々のホモジネートを作製し、抗Cdk5抗体により免疫沈降を行なった。そのサンプル液に基質としてtau,neurofilamentH,KSP peptide,histoneを加え、リン酸化酵素活性を測定したところ、通常の条件下ではtau,KSP peptide,histoneではリン酸化が認められたが、neurofilamentHはリン酸化されなかった。この時のホモジネート量と酵素活性との関係はhistoneを基質とすると容量依存性が認められたが、tauに関しては一定量で活性が定常状態となった。tauに対する酵素活性が最大となる最低量のホモジネート量(蛋白濃度2.0mg/ml)に固定し、多数の凍結脳の酵素活性をtau,KSP peptide,histoneを基質として測定し、現在、結果の解析中である。なおtau,KSP peptide,histoneのリン酸化はcdc2特異的阻害剤であるBtyrolactoneI 2 μMで90%以上の阻害が認められた。また免疫沈降物をSDS-PAGEゲルで分離し、PVDH膜に転写してWestern Blotを行った結果、Cdk5によるバンドが認められた。以上より、確かにCdk5が免疫沈降され、タウ蛋白をリン酸化していることが確認された。同時に左側大脳半球を4%パラフォルムアルデヒドにて固定し、パラフィン切片を作製し、神経病理学的診断を行った。今後、パラフィン切片上で左側の嗅内皮質の神経原線維変化含有神経細胞と、残存神経細胞数を測定し、酵素活性との相関関係の有無を検索する予定である。
|