研究概要 |
アルツハイマー型痴呆(ATD)患者および神経疾患や痴呆症状を認めなかった正常対照患者の死後脳の前頭葉皮質組織より,acid guanidin-phenol-chloroform変法にてtotal RNAを抽出した後、ランダムヘキサマーおよび逆転写酵素を用いて1st strand cDNAの合成を行った。ヒトのカルシウム結合蛋白であるcalbindin-D28k (CB)およびparvalbumin(PV)cDNAに特異的なプライマーを作成し,RT-PCR カイネティクス分析法により両対象群の同部位におけるCB mRNAおよびPV mRNA発現量の半定量的比較を行った。同部位におけるCB mRNAおよびPV mRNAの発現量は,正常対照群に比べてATD群において有意な減少が認められた。ATD脳に生じる神経細胞死やCBおよびPV免疫陽性細胞の減少所見などを併せて考慮すれば,本疾患の病態に神経細胞機能の維持調節にかかわる細胞内カルシウムホメオスタシスの障害が関与している可能性が示唆された。
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