研究概要 |
G-CSFの増殖シグナルを伝達していると考えられているJakキナーゼのうち、G-CSF刺激時にはJak1,Jak2,Tyk2が活性化される。報告されたJak1,Jak2欠損マウスの表現型によるとJak1,Jak2の欠損は顆粒球の増殖に影響を与えておらず、IL-3,IL-6,Tpo,Epoなどによる増殖シグナルは障害されるものの、G-CSFの増殖シグナルは正常に伝達されている。この事よりG-CSFによる好中球の増殖には、G-CSFにより活性化される残りのJakキナーゼであるTyk2が必須であるか、または1種類のJakキナーゼの欠損を他のJakキナーゼが補完している可能性が想定され、この点を生体内で明確にするため、Tyk2欠損マウスを作成した。Tyk2の欠損はマウスの発生に必須ではなく、白血球、赤血球、血小板数は正常であった。In vitroコロニー形成法では、IL-6,G-CSF,TPOなど多数のサイトカインがTyk2を活性化するのにもかかわらず、CFU-GM,CFU-E,CFU-Meg,CFU-Gコロニーの形成に差を認めなかった。また、マウスにG-CSFを投与したところ、野生型マウスと同様に好中球数の増加を認め、Tyk2の欠損は好中球造血に影響を与えなかった。っまりJak2単独により制御される赤血球や血小板造血と異なり、好中球造血は複数のJakキナーぜが補完して行うことが判明した。また、Tyk2欠損マウスではIL-12刺激によるStat4のリン酸化、IFNγ産生、Th1細胞への分化が抑制されており、Tyk2はIL-12シグナル伝達に必須であることを明らかにした。
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