1)Hep3B細胞の培養上清中の増殖抑制因子について、11年度に引き続き同定を試みた。ELISA法などによりHep3B細胞培養上清中にinterleukin-8、VEGF、TGF-βなどを検出し、これらの増殖抑制効果について抗体添加などにより検討中である。 2)培養上清にATRA、cisplatin、doxorubicin、vincristin、etoposide、MST-16、dexamethasone、interferon、thalidomideなどを添加培養し、細胞増殖能やアポトーシス誘導能、細胞周期への影響に関する解析、また細胞周期関連遺伝子発現の検討を行い、新規物質との相互関係について11年度に引き続き検討中である。 3)中等度高度悪性度群非ホジキンリンパ腫の予後に対するHCV感染、IL-6、TNFαの影響について検討した。1993年1月から1997年3月までに当院血液科に初回入院したB細胞性NHL96例中、(1)バーキット型をのぞく中等度・高度悪性度群で、(2)初回治療としてCHOP療法、もしくはそれに準じた化学療法を行い、(3)治療前の血清が凍結保存されていた、HCV抗体陽性者13例を含むB細胞性中等度・高度悪性度群リンパ腫患者66例について、ELISA法を用いて初回化学療法前の血清中IL-6、TNFα濃度を測定した。HCV抗体陽性群(13例)と陰性群(53例)では、この2つのサイトカイン濃度に明らかな違いを認めなかった。予後については、IL-6高値群、TNFα高値群は有意に全生存期間が短かったが、無病生存期間には差を認めなかった。これに対し、HCV抗体陽性群(11/44、25.0%)は、全生存期間については有意差を認めなかったが、無病生存期間が有意に長いことを認めた(対数階級検定、p<0.05)。この現象とHep3B細胞培養上清中の増殖抑制因子との関係について、今後検討を進める予定である。
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