1.慢性骨髄性白血病(CML)細胞株K562のアクチビンAによる増殖抑制機構の解析として、ジアニシジン染色およびWestern blotting(WB)によるヘモグロビン(Hb)の発現量の変化を解析し、K562の増殖抑制が赤芽球系分化によることを明らかにした。 2.アクチビンA刺激によるK562のBcl-2ファミリーおよびカスパーゼファミリーの発現量の変化をWBにより経時的(0〜96hr)に解析した結果、Bcl-2ファミリーでは、昨年度報告したCML細胞株KU812同様にMcl-1の一過性強発現(0.5〜12hr)が認められた。しかし、K562ではKU812でみられたBaxの発現誘導は認められず、Caspase-9および-3の活性型タンパクの発現も認められなかった。 3.赤芽球系細胞に対する生存因子の1つであるエリスロポエチン(EPO)をアクチビンA刺激時に併用しその効果を解析した結果、KU812ではDFF45/ICADの開裂阻止およびHbの蓄積がWBにより認められ、EPOの併用によりアポトーシスが回避され赤芽球系分化が誘導されることが明らかになった。また、EPO単独時およびアクチビンAとEPOの併用時にMcl-1の持続的な発現増加が認められた。一方、K562ではEPO併用の効果は認められず、Mcl-1の持続的な発現増加も認められなかった。 4.アクチビンAによるCML細胞株の増殖抑制におけるMcl-1の役割を明らかにするために、Mcl-1の過剰発現細胞(KU812/mclおよびK562/mcl)を作製し解析した。その結果、KU812/mclではアクチビンAによりDFF45/ICADの開裂阻止およびHbの蓄積が認められ、アクチビンAとEPOをKU812に併用した場合と同様に、アポトーシスが回避され赤芽球系分化が誘導されることが明らかになった。一方対照として作製したKU812/neoでは、KU812と同様にアクチビンAによりアポトーシスが誘導された。K562/mclでは、K562/neoおよびK562と同様にアクチビンAにより赤芽球系分化が誘導され、Mcl-1過剰発現の効果は認められなかった。 以上の結果より、CML細胞ではアクチビンA刺激後早初期にMcl-1の一過性強発現が起こりアポトーシスおよび分化誘導を制御している可能性が示唆された。
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