研究概要 |
血小板や赤血球分化の最終段階を制御する転写因子であるNF-E2の標的遺伝子を単離してそれらの役割を明らかにするため,以下の実験を行った。 (1)NF-E2標的遺伝子のクローニング 正常マウスとNF-E2のノックアウトマウスの造血器(胎仔肝臓)からそれぞれmRNAを精製し,サブトラクションcDNAライブラリーを作製した。300クローンの塩基配列を決定し,その中に細胞内シグナル伝達分子や転写制御因子,膜型受容体などを見出した。ノーザン解析などから,単離した遺伝子はNF-E2のノックアウトマウスの造血器において顕著にその発現が抑制されていることが明らかとなったさらにそれらの遺伝子を大腸菌に発現させ,それを抗原としてウサギに免役し,ポリクローナル抗体を作製した。今後この抗体を用いた詳細な機能解析を行う予定である。 (2)胚性幹細胞(ES細胞)を用いたin vitroにおける血小板放出系の構築 (1)の実験で単離された遺伝子の機能を生化学的に解析するためには,巨核球が大量に必婁になる。しかし骨髄中の巨核球の量は少なく,またその精製も簡単ではない。そこで,ES細胞にトロンボポエチン(TPO)を添加してin vitroで分化させ,巨核球を大量に産生する培養法を開発した。この方法で得られたES細胞由来の巨核球は,培養液中に血小板様の細胞質断片を生じるため,血小板放出を解析する有用な材料になると期待される。
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