メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染後に糸球体腎炎を発症/非発症症例におけるin vitroでの細菌性スーパー抗原曝露による免疫応答の違いの有無を検討する実験計画であった。しかしながら、MRSA感染関連糸球体腎炎症例は死亡例が多く、また新規発症例がなかったことより、症例の集積が困難であった。そこで、この糸球体腎炎がIgA関連腎炎と位置づけられていることから、対象症例をIgA腎症症例として、末梢血リンパ球におけるcytokineのbalance異常の有無を検討した。 IgA腎症患者、および正常健常人のヘパリン加静脈血より密度勾配重層遠心法にて末梢血リンパ球を得た。さらに、抗ヒトCD4抗体結合磁気ビーズにてhelper T細胞を分離・選択した。末梢血リンパ球をmitogen刺激下に3時間ごとに12時間まで培養し、各々の時間ごとに、蛍光標識抗cytokine(IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-10)抗体を用いて染色、flow cytometryを用いて測定・解析した。また、分離・選択したhelper T細胞を同様に培養し、その培養上清をELISA法にて測定した。 末梢血リンパ球数およびCD4陽性細胞の割合は全ての培養時間において、IgA腎症患者と健常人との間に有意差を認めなかった。cytokine産生様式は、Th1-cytokine(IFN-γ、IL-2)は培養後期(12時間後)に両群とも産生のピークを、Th2-cytokine(IL-4、IL-10)は培養前期(6時間後)にIgA腎症群のみで産生のピークを認めた。また、2群間の比較では、IFN-γ、IL-4陽性細胞の割合は全ての培養時間において有意差を認めなかった。一方、IL-2陽性細胞の割合では培養6時間以降にIgA腎症群に有意な低下を認め、また、IL-10陽性細胞の割合においては、各時間を通じてIgA腎症群にて有意な増加を認めた。
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