研究概要 |
腎遠位尿細管でのイオン輸送Na+-ATPase(ナトリウムポンプ)により制御されているが、その調節機構は明確にされていない。腎尿細管上皮細胞において、内向き整流性カリウムチャネル(Kir)はナトリウムポンプの作用においてカリウム(K+)を逆方向に移動させるK+リサイクリング機能を果たし、腎尿細管でのナトリウムポンプ制御機能およびイオン輸送制御に重要な役割を果たすと考えられる。 腎遠位尿細管ではKirのひとつである,Kir4.1が基底膜側に存在することを、申請者らのグループで明らかにしている(Immunolocalization of an inwardly rectifying K+channel,KAB-2(Kir4.1),in the basolateral membrane of renal distal tubular epithelia. Ito et al.1996,FEBS let,388:11-15)。申請者は生理的な役割が全く明らかにされていなかったKir,Kir5.1,が腎臓に存在すること、およびKir4.1と異種複合体を形成すること、を生化学的手法を用いて明らかにした。更に、Kir4.1とKir5.1で形成されるカリウムチャネルが、生理的なpHの変動の範囲でチャネル活性を大きく変えることを電気生理学的手法を用いて明らかにした(The heteromeric Kir4.1-Kir5.1 channel is sensitive to physiological range of intracellular protons.Tanemoto et al. 2000,Biophysical J,78:345A)。 この知見は、腎尿細管基底膜側において生理的pHにより制御されるチャネルの存在を世界で始めて明らかにしたものであり、腎遠位尿細管における酸塩基平衡調節を含むイオン輸送の調節機構の解明に繋がるものである。
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