研究概要 |
1)目的:トログリタゾンはマクロファージに対して抗炎症作用を示したり,血管平滑筋細胞の増殖を抑制したりすることが報告されている.そこで,腎メサンギウム細胞の増殖(3H-Thymidine incorporation)に対してどのような影響をもたらすかを検討した.結果:ATIIにて増殖を刺激をしたラット培養メサンギウム細胞に対してトログリタゾンは濃度依存症にその増殖を抑制した.この作用の機序の一つとしてMAPキナーゼ系の抑制によることが示唆されるが,現在,そのほかの機序についても検討中である. 2)目的:トログリタゾンはインスリン抵抗性改善作用を有することより注目されており,その作用は核内レセプターPPARYγの活性化による.一方,トログリタゾンは抗酸化作用を示すがその作用はα-Tocopherol(Vit.E)の構造を有することによるとされる.今回,われわれはラット培養メサンギウム細胞を用いてインターロイキン1βの存在下におけるトログリタゾンの一酸化窒素産生に及ぼす影響を検討した.結果:トログリタゾンはインターロイキン1βによる一酸化窒素産生に対して,高濃度(50^〜100μM)ではその産生を抑制するが,現在治療で得られる血中濃度と同程度の低濃度(0.1^〜100μM)領域においてはその産生を増強する.PPARYγ刺激薬やα-Tocopherolを用いても一酸化窒素産生の増強は認められないことから,この低濃度領域での一酸化窒素産生増強作用にはPPARYγシグナル伝達系あるいは,Vit.Eの作用とは異なる機序の存在が示唆され,現在,検討中である.
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