研究概要 |
目的:Troglitazoneはインスリン抵抗性改善作用を有することより注目されており,その作用は核内レセプターPPARγの活性化による.一方,Troglitazoneは抗酸化作用を示すがその作用はα-Tocopherol(Vit.E)の構造を有することによるとされる.さらに,培養血管平滑筋細胞やマクロファージに直接作用して各種サイトカインあるいは一酸化窒素産生(NO)の産生に影響を及ぼし動脈硬化病変の進展抑制に関与する可能性が示唆されるなど,多様な作用を持つと考えられつつある.今回,われわれはラット培養メサンギウム細胞を用いてインターロイキン1β(IL-1β)存在下におけるTroglitazoneのNO産生に及ぼす影響を検討した. 結果:1)ラット培養メサンギウム細胞において,IL-1β刺激によるNO産生は,治療で得られる血中濃度と同程度の低濃度領域においては濃度依存性(0.1〜20μM)かつ時間依存性に増強された.2)α-tocopherolはIL-1β存在下にNOの産生を増強しなかった.3)PPARγのリガンドである15dPGJ2およびPPARγとヘテロダイマーを形成する核内レセプターRXRのリガンドである9-cisRAはともにIL-1βによるNO産生を抑制した.4)troglitazoneはIL-1βによるiNOS mRNAの発現を増強しなかった.しかし,troglitazoneはIL-1βによるiNOS proteinの生成を増強した. 結論:Troglitazoneはメサンギウム細胞においてIL-1βによるNO産生を増強するが,それはVit.E構造による作用あるいはPPARγを介する作用ではなく,iNOS proteinのdegradationの抑制を介する可能性が示唆された.
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