目的:細胞内のpH変化は細胞の機能に様々な影響を及ぼす。研究の第一段階として細胞外低カリウムにより細胞内は酸性化し、OKP細胞ではその後Na/H antiporterの活性が亢進することを報告した。これは、低カリウム血症時に近位尿細管のNa/H antiporter活性が亢進する一つの機序と考えられる。しかしこの細胞内酸性化の機序は十分に理解されていない。今回は(研究の第三段階)血管平滑筋細胞(VSMC)とOKP細胞を比較することにより細胞内酸性化の機序の検討を行った。方法:OKP細胞とVSMCの細胞内pH(pHi)の変化をBCECFにより測定し、低カリウムによるpHi低下の機序につき検討した。結果:両細胞とも低カリウム溶液(K=1.1mM)によりpHiは有意に低下し、この低下は3mM Ba^<2+>により完全に抑制された。OKP細胞では1mM Zn^<2+>により抑制可能なH^+流入経路の関与が示唆されたが、VSMCではその存在は示唆されなかった。また両細胞ともにstilbene感受性のHCO^-_3排泄の関与が示唆されたが、OKP細胞ではCl^-非依存性、VSMCではCl^-依存性であった。結論:低カリウムにおける細胞内酸性化は、Ba^<2+>感受性カリウム流出、Zn^<2+>感受性H^+流入およびstilbeme感受性HCO^-_3流出を介していると考えられたが、OKP細胞とVSMCでは一部相違がみられた。
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