常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎(ADPKD)は遺伝性腎疾患の中でも最も頻度の高い疾患で、その責任遺伝子としてPKD1遺伝子とPKD2遺伝子が同定されている。Polycystin-1(PKD1蛋白)は細胞間あるいは細胞-細胞外基質の相互作用をつかさどる膜貫通蛋白であり、Polycystin-2(PKD2蛋白)は、チャンネル様の膜貫通蛋白であることは判明しているが、実際の機能についてはまだ解明されていない。今回私たちは細胞レベルでPKD蛋白(ポリシスチン)がどのように振る舞い、そして尿細管細胞の形態形成においてどのような機能を有しているのかを検討する。今年度は、まずPKD2遺伝子の全長cDNAを発現ベクター(pCEP4およびpcDNA3.1)に組み込むことに成功した。また、遺伝子導入する細胞株として尿細管細胞の一種であるLLCPK細胞およびMDCK(Madin-Darby caninekidney)細胞を選択し、その培養系を確率した。そしてその細胞株にPKD2遺伝子の全長cDNAをリポゾーム法により遺伝子導入を行い、実際に遺伝子が発現しているかどうかをその細胞から採取したRNAを用いてノザンブロット解析を行い、その発現を確認した。今後は、これらをコラーゲンゲル内での3次元培養に移行し、管腔形成あるいは嚢胞形成についての形態観察を行う。またさまざまな細胞外基質やサイトカインなどの液性因子などを用いて、管腔形成あるいは嚢胞形成における増殖・分化促進因子についても検討する予定である。
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