研究概要 |
目的:新生児仮死における遅発性脳内エネルギー代謝不全は、生後一週間以内に進行性を引き起こされ、重篤な後遺症を残す臨床的に重要な病態であり、生後からこの病態に至るまでの数時間は、2次性神経細胞障害の治療時期が存在すると考えられる。今回は新生仔豚を用い、遅発性脳内エネルギー代謝不全のモデルを作成した。 対象および方法:対象は生後24時間以内の新生仔豚5頭。人工呼吸管理を行ない、仮死負荷として頚部の血圧測定用マンシェットを用いた圧迫(300mmHg)、吸入酸素濃度(FiO2)を0.06まで低下、トラゾリンを用いた負荷後の血圧上昇防止し、PCrのpeakが消失した20分後にFiO2を0.6とし、エピネフリン投与にて蘇生を行なった。以後血圧低下およびアシドーシスの補正を行い、抗生剤も定期的に投与した。脳内エネルギー代謝状態は^<31>P-MRS(大塚電子社製、BEM250/80,2.0Tesla)、直径3cmのsurface coilを用いて頭頂部より測定し、持続的に負荷1時間前から3時間後まで、以後54時間後まで継続して測定を行なった。スペクトルの分析はピーク高より算出した。 結果および考案:仮死負荷継続時間は55-135分であった。蘇生後2-3時間で全例PCr/Pi比が1以上となり、その後進行的にPCr/Piの減少を認めた。負荷後42〜54時間では、低血糖、低酸素、低血圧状態がないにもかかわらず、PCr/Pi最低値は0.1-0.7であり、この値は仮死負荷時のPCr/Pi減少率が高く、仮死後のPCr/Pi回復率が低いほど低値であった。このため脳エネルギー代謝状態の回復が遅延する程、重度の遅発性エネルギー不全を引き起こすと考えられた。以上の結果よりこの新生仔豚を用いた本研究法は、臨床的に認められる遅発性脳内エネルギー代謝不全を引き起こす新生児仮死のモデルに成り得ると考えられた。
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