新生児領域において普及してきた人工換気療法である高頻度振動換気療法(HFO)は、高頻度の振動により換気を施行するものである。肺サーファクタントはサブタイプに分かれ、表面活性の高いlarge aggregate(LA)から、活性の低いsmall aggregate(SA)に転換される。この転換には、呼吸運動による気液界面積の変化が必要である。HFOでは従来のIMVによる大きな気液界面積の変化がないため、サーファクタントサブタイプ転換の面からは、HFOによる換気が有利であることが予測される。IMVとHFOの2つの人工換気療法を行った時のサーファクタントサブタイプの分布を検討した。 本年度は、Veldheuzenらの方法に従って^3HでラベルしたLAの作成方法を確立した。成熟家兎の肺胞洗浄液を超遠心して取り出したペレットを0.8M蔗糖に重層後、超遠心して抽出したLAに対して、^3HラベルDPPCを加えボルテックスした。この液を蔗糖密度勾配遠心法して分画に分け、リン脂質と^3Hのピークが一致することを証明した。さらに幼若家兎の健状肺モデルに対して、^3HでラベルしたLAを経気道的に投与し、4時間の人工換気後に肺胞洗浄を行った。回収された肺胞洗浄液のサーファクタントをサブタイプに分離して、各サブタイプの^3Hの量をカウントした。^3H-LA投与の利点は、既に存在しているサーファクタントに影響されることなく、人工換気療法の種類によるサーファクタントサブタイプ転換の違いを評価できるためである。 現在、IMV群7例、HFO群1例に対して実験がなされた。IMV群7例の%SA=SA/(SA+LA)の平均±SDは40.6±9.3%であり、HFO群1例の%SAは45.8%であった。今後、肺胞洗浄により作成した幼若家兎の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)モデルに対しても同様の実験を施行予定である。
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