肺組織特異的遺伝子導入モデルによって、新生児の重症呼吸障害の遺伝子治療法を確立することが最終的な目標である。そのための基礎研究として、今年度病態モデル作製と病態評価方法を確立した。 1妊娠マウスへの薬物投与による低形成肺モデルマウスの作製 妊娠8日目のマウスにナイトロフェンを投与し、妊娠18日目に帝王切開で胎仔を娩出させる。この方法を取ることで、従来の投与法より、横隔膜欠損の合併の少ない低形成肺モデルマウスを作製できることを示した。 2新生仔マウスの肺機能評価 帝王切開により出生させた低形成肺マウスの呼吸機能を、気道に圧トランスデューサーを接続して、圧-容量曲線を示すことで客観的に評価する方法を確立した。圧トランスデューサーシステムは、慶應義塾大学理工学部と共同する形で、独自のプログラムのものを作製した。 3パーフルオロカーボン投与による、低形成肺モデルマウスの呼吸機能改善 ナイトロフェン投与により作製した低形成肺モデルマウスの呼吸機能が、経気道的パーフルオロカーボン投与によって改善することを、症状経過・組織所見の両面から示した。 化学的・生物学的に不応性であり、呼吸機能を損なわないパーフルオロカーボンは、Cre発現アデノウイルスを気管内投与し、肺組織特異的遺伝子を導入する際の溶媒として有効な可能性を示した。 以上の結果は、2000年5月に開催されるアメリカ胸部疾患学会で発表する予定である。
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